太古の戦争
CDがたくさん売れ、それが音楽セールスの主軸だった時代には、ラウドネス戦争(音圧戦争、ラウドネス・ウォーとも)という争いがありました。
人間は音が大きければ大きいほど迫力があって良い音楽に聞こえるという傾向があるため、競い合うように音圧を高めていった歴史があります。
CDの場合は音圧を上げた分だけ反映されていたのですが、時代は変わり近年ではストリーミングが主流になりました。
このラウドネス戦争を落ち着かせたのが、ストリーミングサービスに導入されているラウドネスノーマライゼーション
ラウドネスノーマライゼーション
簡単に言うと「高すぎる音圧はこちらで勝手に小さくしますよ」という機能です。
例えばYouTubeで見てみましょう!
このNormalizedという部分がノーマライゼーションに関する部分で、一番右に0.9dBと書かれています。
これは「アップロードされた動画より0.9dB小さくしましたよ」ということを表しています。
ノーマライズされるとどうなる?
ノーマライズされることでどのような変化が起きるか見てみましょう。
まずピアノソロ曲を普通に書き出した時の波形がこちらになります。
音が小さいところは小さく、盛り上がる部分は大きい波形が見て取れます。
ダイナミクス(強弱)があり自然な音楽だと分かります。
次に、音圧を上げるためにかなり強めにコンプやリミッターをかけてみましょう。
こちらは、外見の様子から海苔波形と呼ばれる波形です。
ラウドネス戦争で量産された産物です。
これをこのままYouTubeにアップロードしたとしたら音圧が下げられ以下のようになります。
元々あった音楽的な強弱が失われ、音圧を無理に上げた際のノイズや音質の劣化だけが残る音声となります。
しかも音圧が他の動画と揃えられることで、音の迫力が出るという恩恵も受けられません。
ここまで極端なケースは少ないですが、この様な事が起きています。
もちろん楽曲としてある程度のラウドネスは必要ですので、配信サービスの制限を考慮したラウドネス設定をするのが理想になります。
LUFSという指標
近年ではLUFS「ラウドネスユニットフルスケール」という測定方法が使われています。
LUFSは人間の聴覚特性に合わせて作られた規格で、これを測定して配信サービスはノーマライズを調整しています。
0に近づくほど大きな音に聞こえ、マイナス表記なので数字が大きいほど小さな音になります。
短いスパンでのshort LUFS ではなく、楽曲を通しての平均的なLUFS(int、INTEGRATEDなど)で判断しましょう!
LUFSを測定する方法はメーターや解析系のプラグインやソフトウェアを使用するのが確実です。
定番のラウドネスメーターソフトについてはこちら
[無料あり]定番ラウドネス(LUFS/LKFS)メーター8つ
最適なラウドネス値 ストリーミングサービスでリリースする場合、ラウドネスの設定はとても重要です。 ラウドネスノーマライゼーションで音圧を下げられることのないよう、理想的なLUFSに設定しましょう。 L ...
続きを見る
配信サービスごとのラウドネスノーマライゼーション
前情報が長くなりましたが、ここからは様々な配信サービスでのLUFS値を確認したいと思います。
YouTube -14.0LUFS
上でも触れましたが、YouTubeは-14.0LUFSでノーマライズされます。
上の図では0.9db下げられていましたが、このdbはLUFSと同義らしいので0.9LUFS下げられたと捉えることができます。
ニコニコ動画 -15.0LUFS
同じく動画共有サイトのニコニコ動画は-15.0LUFS
YouTubeよりも強めにノーマライズされることになります。
https://ch.nicovideo.jp/nicotalk/blomaga/ar1848078
Amazon Music -14.0LUFS
日本国内で人気のストリーミングサービスAmazon Music
Amazonは公表していませんが、Alexaでの基準値と同じ-14LUFSではないかといわれています。
Spotify -14.0LUFS
海外でのシェアが高いSpotify
公式サイトで-14LUFSと記載されています。
https://artists.spotify.com/help/article/loudness-normalization
Apple Music -16.0LUFS
Apple MusicやApple Podcastsは-16LUFSとなっています。
Deezer -15.0LUFS
掲示板情報ですが、開発者に問い合わせたところ-15LUFSに設定していると回答があったようです。
https://en.deezercommunity.com/features-feedback-44/how-does-the-normalise-volume-option-work-57025
LOUDNESS PENALTY
LOUDNESS PENALTYというサイトを使えば、主要なサービスでのノーマライズ結果を解析することができます。
https://www.loudnesspenalty.com/
mp3やwavをアップロードすると
- YouTube
- Spotify
- TIDAL
- iTunes
- Amazon Music
- Pandora
- Deezer
で配信した際にどれくらいノーマライズがかかるかをシミュレーションしてくれます。
右下の音量ボタンから配信サイトが選べ、個々に仕上がりをチェックすることができます。
有料になりますがプラグイン版もありますので、DAWで使用する場合に便利です。
https://www.meterplugs.com/loudness-penalty
TuneCoreなどで配信する場合
インディーズで配信する場合はTuneCoreやBIG UP、Frekul、LANDRのようなデジタルディストリビューターに代理してもらうケースが多いです。
そこで問題になるのが「結局何LUFSに合わせれば良いの?」という悩みが生まれます。
複数の配信サイトにリリースする場合は「規制が緩い方に合わせて作り、きつい方で若干ノーマライズさせる」が好ましいです。
理由は、音圧が足りない場合小さいまま配信される事があるからです。
大きい分には小さくされますが、小さい音が大きくされるとは限らない点に注意が必要です!
-13LUFSと-15LUFSの場合、最初から-15LUFSでマスタリングすると-13LUFSのサービスでは2LUFS足りず小さな音になります。
日本国内で考えると、Amazon、Spotify、Appleあたりがメインですので-14LUFSが理想です。
-13LUFS~-14LUFSでマスタリングすることで違和感なく仕上げることができるはずです。
もう一つの問題点として、iTunesやレコチョクなどのダウンロード販売との併用が出てきます。
ストリーミングとは違いダウンロード音源にはノーマライズがかからないので、他の曲と音圧がバラけることが懸念されます。
※iTunesの場合、音量自動機能をオンにしたユーザーは音量が揃うので問題ありません。
ストリーミングのペナルディは我慢し、ダウンロード販売のため-11LUFSでマスタリングしているというケースもあります。
どちらに合わせるか悩みどころですね。
まとめ
ラウドネスノーマライゼーションが導入されたことで音量が揃えられ、ユーザーとしては聴きやすい環境になったと言えます。
楽曲自体のクオリティが評価されるフェアな時代に変わってきたのかもしれません。
クリエイターは日々変化する環境を知っておく必要がありますが、それがより良い作品作りに繋がると思います。
この記事がラウドネスについての参考になれば嬉しいです!
最後までご覧いただきありがとうございました♪
StudioOneでマスタリング!プロジェクトを解説
リリース前の最終段階 CDや配信リリースする際にマスタリング作業は必須の工程です。 マスタリングはミックスを終えた単曲をアルバムとしてまとめ上げる工程のことを言います。 例えば 楽曲間の音圧の調整 音 ...
続きを見る
DDP作成ができるソフト5つまとめ|マスタリングソフト
DDPとは CDプレスをする際に扱えると便利なDDP DDPは劣化を抑え原音忠実なやりとりをするためのフォーマットです。 今回はDDP(Disc Description Protocol)について書か ...
続きを見る